日本産フトミミズ屬の死相について(第一報)
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概要
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インド,ビルマ國境を原産地とするフトミミズ屬(Pheretima)は,西大平洋岸沿いに分布し,わが北海道をその分布北限としている。本屬はミミズ類の中で最多教の種(Species)を包含しており,本邦でも50種以上の確定種を産する。釣魚の餌料として用いられるツリミミズ科(Lumbricidae)の種數は,このフトミミズ屬(Pheretima)のそれに較べると問題にならぬ程,寡少である。それで筆者はフトミミズ屬のミミズを本邦産ミミの代表としている。ところがこのフトミミズ屬の生態については縦來殆んど知られていなかつた。フトミミズ屬のミミズは一般に体が大形で採集し易く,實験動物として最適のものであるから,これの生態あるいは生活史を明らかにする必要がある。それ故,筆者は1928年以來,その生態の究明に取りかかり,かなりの程度にこれを明らかにした。これを要約すれは次の通りである。1.本邦産フトミミズ屬の中に次の2群を認めることができる。(イ)1年生フトミミズ群春(3,4月)に孵化し,夏(7月)までに成体となり,秋(9,10月)に繁殖し,冬になる頃までに死ぬるもの。(ロ)多年生フトミミズ群孵化した年内には成体にならず,2箇年以上生存を続けるもの。2.1年生フトミミズの第一死徴を確認した。この第一死徴は環帶の後方体節,即ち第XXV節より第XXXV節位の所に現われる。3.この實験によつて普通ミミズ(Pheretima communissima)の死相を詳しく觀察することかできた。4.第一死徴の現われる部位は生理的活動の弱い部位である。この部位の組織學的竝びに細胞學的研究をも必要とするが,これについては向後の研究に俟つことにした。
- 帯広畜産大学の論文
- 1953-03-30