ラット脛骨骨折治癒過程における微細血管構築に関する形態学的研究(平成18年度大学院スポーツ科学研究科修士論文要旨)
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概要
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骨折治癒過程における微細血管構築について検討するために, ラット脛骨骨折モデルを作成した.骨折1日後(n=5), 骨折14日後(n=5), 骨折28日後(n=5)の骨密度測定と形態学的観察を行なった.骨密度は, 骨折部を骨折断端中央部(R1), 骨折断端近位部(R2-3), 骨折断端遠位部(R4-5)の領域別骨密度の測定(DXA : QDR-4500)を行なった.また, 骨折部は, 免疫組織化学染色及びMercox樹脂液注入法によりラット脛骨微細血管鋳型を作製し, 走査型電子顕微鏡による観察を行った.以下の知見が得られた.1)脛骨骨折部のX線所見骨折1日後の脛骨は, 骨組織の連続性が絶たれていた.骨折14日後には, 骨折断端部を中心に仮骨が観察され, 28日後には骨癒合が認められた.2)骨折部の領域別骨密度骨折14日後及び28日後における骨折部の領域別骨密度は, 骨折断端近位部(R2-3)及び遠位部(R4-5)の骨密度が骨折断端中央部に比べて有意に高かった(p<0.05).3)光学顕微鏡観察骨折14日後は, 骨折断端中央部(R1)及び近位部(R2-3)に直径10〜30μmの大小様々な円形あるいは楕円形の形態を呈する軟骨細胞と仮骨形成が観察された.そして, 軟骨細胞周辺部と肥大軟骨細胞にVEGFの反応が認められた.骨折28日後では, 軟骨基質上に骨芽細胞と破骨細胞が観察された.そして, 骨芽細胞にTGF-βの反応が認められた.4)軟骨細胞の面積軟骨細胞の面積は, 骨折14日後;186.12±92.03μm^2, 骨折28日後;290.68±119.37μm^2であり, 骨折28日後が骨折14日後に比べて有意に高い値を示した(p<0.001).5)走査型電子顕微鏡観察骨折14日後は, 仮骨表面に多数の小腔と仮骨組織周辺部に曲線的に走行する微細血管構築が観察された, そして, 骨折28日後の軟骨細胞周辺部には, 直線あるいは曲線的に走行する微細血管構築と毛細血管が仮骨組織内へ侵入する像が観察された.また, 骨髄周辺部及び内膜近傍では, 毛細血管と洞様血管末梢枝の融合によって構築される複雑な3次元網工が観察されなかった.以上の結果から, 骨折治癒過程において, VEGF, TGF-βといった関連物質とともに, 血管構築が重要な役割を担うことが示唆された.
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