走運動により発症する遅発性筋痛の分子機構の解明 : 疼痛行動, 痛覚伝達系, 活動筋の変化から(平成18年度大学院スポーツ科学研究科修士論文要旨)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
遅発性筋痛(DOMS)は高強度の伸張性筋活動後に発症し、スポーツ選手だけでなく一般人も経験する痛みである。しかしその発症のメカニズムは十分に理解されていない。そこで本研究はラットの下り坂走後にDOMSが発症するかどうかを逃避行動テストと脊髄後角二次求心性ニューロンの活性化から検討するとともに、下り坂走が骨格筋組織に誘導する変化も捉えることにより、DOMSが発症する原因について探ることを目的とした。ラットの下り坂走は、下り傾斜角17度に設定した小動物用トレッドミルを用いて、速度25m/分で5分間の走運動を18回繰り返すことにより実施した。下り坂走後の下腿三頭筋における筋痛の評価は、ランダルセリット法により行った(逃避行動テスト)。痛覚伝達系の活性化は、下腿三頭筋または上腕三頭筋に30分間の圧刺激を与え、脊髄後角ニューロンにおけるc-Fos蛋白の出現から検討した(圧刺激実験)。また免疫組織化学法とウェスタンブロッティング法を用いて、ヒラメ筋におけるED1陽性マクロファージの局在とその量的変化を検討した。下り坂走後の逃避行動テストにおける逃避閾値は6時間後に低下し始め、12時間後には最低値を示した。脊髄後角表層におけるc-Fos陽性ニューロン数は下り坂走12時間後に最も多く検出された。一方、ヒラメ筋のED1陽性マクロファージ量は24時間後に最高値を示し、それらは壊死筋線維の内部や筋線維間隙に観察された。またヒラメ筋筋線維の顕著な壊死は、下り坂走48時間後に認められた。これらの結果から、下り坂走は下腿三頭筋にDOMSを発症させるとともに、そのピークはヒラメ筋内マクロファージ量や筋線維壊死がピークに達する前に生じることが示された。従って、DOMSの発症には下り坂走後12時間以内に活動筋の炎症や筋線維壊死に関連する因子が重要な役割を演じている可能性が示唆された。
著者
関連論文
- 走運動により発症する遅発性筋痛の分子機構の解明 : 疼痛行動, 痛覚伝達系, 活動筋の変化から(平成18年度大学院スポーツ科学研究科修士論文要旨)
- 骨格筋の再生機構とリハビリテーション(筋萎縮のメカニズムの解明とリハビリテーション,第43回 日本リハビリテーション医学会 学術集会)
- 73. 骨格筋再生過程における等尺性最大筋力と筋持久力の特徴(運動器, 第61回 日本体力医学会大会)
- 11. 萎縮筋の錘内筋線維におけるNT-3とTrkC発現の特徴(神経・感覚, 第61回 日本体力医学会大会)
- 1. 遅発性筋痛発症時の骨格筋と脊髄後角の特徴(神経・感覚, 第61回 日本体力医学会大会)
- 87.ラット骨格筋再生過程における歩行動作の特徴(運動器,一般口演,第60回 日本体力医学会大会)
- 12.尾部懸垂が筋紡錘と脊髄に及ぼす影響(神経・感覚,一般口演,第60回 日本体力医学会大会)
- 3.下り坂走後の走運動が発痛現象に及ぼす影響(神経・感覚,一般口演,第60回 日本体力医学会大会)
- ラット内側側副靱帯の修復過程における1型と3型コラーゲンの特徴(運動器, 第59回日本体力医学会大会)
- 骨格筋肥大過程における筋衛星細胞と細胞接着分子との関係(運動器, 第59回日本体力医学会大会)
- 16.ラット海馬歯状回の神経新生に対する慢性的な走運動の影響(神経・感覚,一般口演,第60回 日本体力医学会大会)
- 走運動後の海馬における神経活動と細胞増殖との関係(神経・感覚, 第59回日本体力医学会大会)
- 548.下り坂走により誘導される骨格筋・脊髄・後根神経節の変化(運動器)
- 14.ラット下り坂走後の機械的刺激に対する脊髄後角の応答(第20回日本体力医学会近畿地方会)