骨格筋再生過程における筋組織、筋力、歩行動作の特徴 : ラットを使った基礎的研究(平成18年度大学院スポーツ科学研究科修士論文要旨)
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概要
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骨格筋の挫傷はスポーツ活動で頻繁に起こる損傷であるが、筋挫傷に対する治療法は確立されていない。一方、筋挫傷に関する研究は、筋組織や筋力に着目したものが多く、動作の変化を検討した研究はない。そこで本研究は、筋挫傷後の筋組織、筋力、歩行動作の特徴を捉えることに加え、それらがどのように関連しながら筋再生を進めているのかについて明らかにすることを目的とした。ウィスター系雄ラットを実験動物とし、下腿三頭筋の筋挫傷はマス・ドロップ法により引き起こした。筋組織の観察はヘマトキシリン・エオジン染色後、光学顕微鏡にて実施し、筋管細胞および正常筋線維の横断面積を計測した。筋力は電気刺激による足関節底屈の最大等尺性筋力と筋持久力を測定した。歩行動作はトレッドミル上を歩行させたラットの足関節をハイスピードカメラで撮影し、3次元的に解析した。全ての実験は、挫傷2日、1、2、3週後の日程で行った。筋管細胞は挫傷1週後に出現し、3週後にも観察され、筋管細胞横断面積は筋再生の進行とともに増大した。最大等尺性筋力は実験期間を通して、挫傷群はコントロール群よりも有意な低値を示したが、2週後には85%程度まで回復した。一方、筋持久力は挫傷の有無による差が認められなかった。また、歩行動作の立脚期における最大背屈角度および最小踵骨高は、挫傷1週後までコントロール群と比較して有意な差が認められたが、2週後以降は正常レベルに回復した。以上のことから、最大等尺性筋力の85%程度の回復で歩行動作が正常化することが明らかとなった。さらに、挫傷3週後では、歩行動作と筋持久力の正常化および最大等尺性筋力の90%程度の回復が示されたにも関わらず、多くの筋管細胞が観察されたことから、動作や筋力の回復は組織学的な筋再生の完成に先行して生じることが示唆された。
著者
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