高比重水におけるトレッドミル歩行が生体に及ぼす影響(平成16年度大学院スポーツ科学研究科修士論文要旨)
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概要
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本研究は、硫酸ナトリウムを用いて水の比重を1.127に高めた(以下、高比重水)水中トレッドミル歩行が、生体に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。被験者は健康な男子大学生9名(年齢20.3±1.1歳、BMI 21.4±1.8)。水位を腸骨稜とし、高比重水、水道水、大気下(以下、室内)の3種類のトレッドミル歩行を行なった。実験は、立位で5分間の安静の後、40m/minの速度からトレッドミル歩行をスタートさせ、各ステージの3分毎に10m/minずつ、歩行可能な速度まで漸増させた。安静時およびトレッドミル歩行中の酸素摂取量、心拍数、歩数、主観的運動強度以(以下、RPE)、下肢疲労感覚(以下、LFS)を測定した。歩幅は歩数と歩行速度から算出した。その結果、腸骨稜レベルにおける高比重水と水道水での歩行運動は、同一の歩行速度における酸素摂取量の値が概ね同等であり、高比重水における歩行においても、全身性の負荷量が水道水と同等程度得られることが明らかとなった。心拍数については、同一の歩行速度において、高比重水の方が水道水に比べて高い値を示し、水圧によって静脈環流が、より増加したことによるベインブリッジ反射が関与したものと示唆された。また、浮力による感覚受容器官を介した反射性の要因が関与する可能性も推察される。歩幅については、高比重水と水道水とでは概ね同じ値を示したが、室内の歩行に比較して有意に大きい値であった。また、RPE、LFSは、3種類の条件において、高比重水での値が最も高い値を示し、同じ強度の感覚における歩行速度は水道水に比較して低速の範囲であった。これらの結果から、高比重水を用いた水中トレッドミル歩行は、体重負荷を大きく軽減でき、低速においても下肢に傷害を受けた者のリハビリテーションや運動療法、肥満者のトレーニング等に対する水中運動として活用できる可能性が示唆された。
- 大阪体育大学の論文