プロゴルファーのこころの成熟過程に関する事例研究 : 競技経験の語りと風景構成法から(平成16年度大学院スポーツ科学研究科修士論文要旨)
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概要
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本研究は、競技経験を通してこころはどう成熟していくのかに関する研究である。先行研究では、実証的研究とナラティブ(語り)研究の2つの方法により、こころの成熟過程を捉えていこうとする試みがなされている。しかしながら、選手の全体性を見据えた実践への知見は少なく、また競技レベルの高い選手を対象とした研究も少ない。そこで本研究は、プロゴルファーの競技経験とこころの成熟過程を検討することを目的にインタビュー調査を行った。調査は、プロゴルファー4名を対象に行い、彼らの競技経験の語りと風景構成法作品を手がかりに分析を行った。特に競技経験を、身体性と他者関係の2つの視点から捉えた。調査の内容は、半構造化インタビュー(約50分×5セッション)。(1)風景構成法描画、(2)ライフライン1(初期記憶〜プロテスト合格)の作成、(3)ライフライン1についての聴き取り、(4)ライフライン2(プロテスト合格〜現在)作成、(5)ライフライン2についての聴き取りを行った。分析方法は、競技に対する取り組み方に着目し、発話データから危機の出来事、転機の出来事とその前後での競技への取り組みの変化とプレーや身体感覚の変化に関する語りを抜き出し、風景構成法作品の印象を交えて、検討を行った。その結果、選手が抱える悩みは、彼らのアイデンティティを混乱・喪失させる危機となっていた。しかし、競技経験の中で起こる転機の出来事が、競技への取り組みへの質的変化をもたらし、それと同調するようにプレーの質的変化も生じさせていることが示された。そこには、無意識的動機づけの関与が推測された。この変化の過程が競技経験におけるこころの成熟過程であり、彼らのアイデンティティを模索する過程でもあった。本研究によって提示された事例から、コーチングやゴルフ教育において、選手自身が抱えている悩みとどのように付き合っていこうとしているのかという視点に立ち、選手自らが問題を解決していく力を信じ見守っていくことが、こころの成熟を促していく上で重要であることが示唆された。
- 大阪体育大学の論文
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