陸上競技短距離選手におけるハムストリング筋腱損傷に関する研究(平成16年度大学院スポーツ科学研究科修士論文要旨)
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概要
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筋腱損傷とは、いわゆる『肉離れ』のことである。筋腱損傷のほとんどが軽症であることが多く、筋腱損傷が起きても医療機関を受診することが少ないため、疾患の詳細が解明されていない。疫学的研究では、陸上競技選手のハムストリングに多発することが報告されているが、陸上競技は、走跳投を行うスポーツ種目であり、それぞれの種目によって必要とされる運動要素が異なるため、種目ごとの受傷に関して調査する必要がある。また、筋腱損傷は再発が多いと言われ、再発予防のためにも筋の評価が重要である。そこで本研究は、発生頻度が高いといわれている陸上競技種目の中でも、どの種目に多発しているのかアンケート調査を行い、各種目の関節および筋の柔軟性を測定した。その後、損傷回数別に等速性筋力測定器を用い、膝関節・股関節の屈曲・伸展時の筋力測定を行った。調査の結果、特に男子短距離選手にハムストリングの筋腱損傷が多発していた。柔軟性については、ハムストリング損傷群と非損傷群では有意な差は認められなかった。また、損傷回数別に、膝関節・股関節の屈曲・伸展時の筋力を検討したところ、有意な差は認められなかったが、複数回損傷群では、高速角速度での膝関節の屈筋/伸筋比が、他の群よりも低い傾向が認められた。しかし、ハムストリングは二関節筋であり、本研究で用いた方法では、二関節筋の筋出力を検討することが困難であり、今後は複合関節運動での測定を検討する必要がある。