高齢者の歩行運動における身体重心の三次元解析(平成16年度大学院スポーツ科学研究科修士論文要旨)
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概要
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本研究では高齢者の歩行運動について、健康な高齢男性25名、若年男性25名の総計50名の被験者に自由歩行を行わせ、体育館内に仮設した歩行路(全長約10m、全幅約1.5m)の正面と左斜め側方(約45度)に設置された2台のビデオカメラ(60fps)によって撮影し、Braune and Fischerの研究手法を用いて歩行中における身体重心の動きを三次元解析すると共に、重心動揺に関連する体力要因(筋力、平衡機能など)についても測定を行い、若年者との比較を通して高齢者の歩行動作における特徴を探ろうとした。1.高齢群の歩行動作は、歩行速度が遅く、歩幅が短く、歩調がやや速く、足向角が大きく、歩隔が狭い傾向にあった。2.身体重心動揺の歩行1周期における時間経過では、高齢群の前方への移動が、片脚支持中期(mid-stance)付近で若年群に遅れる傾向にあり、左右動では、若年群のバランスの良い左右動に対し、高齢群では一方(左)に偏向する傾向が見られた。上下動に関しては、若年群との間に特別な差異が認められなかった。3.歩行中の三次元空間における各方向(XYZ)への動揺軌跡は、高齢者の特徴として、前後動が大きく、左右動および上下動が小さい傾向にあった。この傾向は、身長で補正しても特別に変化することはなかった。4.高齢群における重心の前後動、左右動、上下動の平均最大振幅と、歩行動作の指標である歩行速度、歩幅、歩隔、足向角との間には有意な相関が見られず、前後動と歩調との間にのみ有意な負の相関が認められた。5.体力との関係では、平衡機能や下肢筋力を含む多くの体力要因が、歩行中の身体重心動揺(最大振幅)との間に有意な相関が見られず、わずかに、上下動とバランステスト(開眼・閉眼片足立ち)との間にのみ有意な正の相関が認められた。以上の結果から、自由歩行中の身体重心動揺から見た高齢者の特徴としては、若年者に比して進行方向への速度変化が大きく、左右方向と上下方向への移動範囲が狭く、立脚中期(ミッドスタンス)に入る前の前方移動が遅い、という傾向が認められた。
- 大阪体育大学の論文
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