知的障害者の筋出力特性に関する研究 : 瞬発的動作(押す・引く)から見た一考察(平成16年度大学院スポーツ科学研究科修士論文要旨)
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概要
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知的障害者(Intellectual Disability: ID)の筋出力特性を明らかにするために、ID群(n=14:男性10名・女性4名、平均年齢21.0歳)とnon-ID群(一般大学生; n=18:男性9名・女性9名、平均年齢20.7歳)の瞬発的動作を測定した。実験の方法は、滑車を取り付けた木箱(高さ1.3m、幅0.60m、奥行き0.8m、質量30k)を座位・押す、座位・引く、立位・押す、立位・引くの4種類の動作を全力で行わせた。木箱の時間経過に伴う変位を10msごとに検出し、速度と加速度を算出し、各群間を比較した。その結果は、以下のようであった。1.筋出力パターン:non-ID群は初動作時に大きな力を発揮し、150ms付近から急激に低下した。一方、ID群は著明なピーク値を示さず低い平坦な経過を示した。non-ID群は初動作時の男女差が大きいが、ID群にはその差が見られなかった。2.平均速度:ID群の男女間において、立位・押すと立位・引く動作以外で統計的に有意な差が得られた。non-ID群は200ms-300ms付近で速度変化がなくなるのに対して、ID者は測定終了時まで緩やかに上昇していく傾向がみられた。3.最大速度、最大筋出力:ID群の男女間で統計的に有意な差がみられなかった。4.力-速度関係:non-ID群とID群を比較してみると、全く異なったパターンを示した。non-ID群は、短時間に大きな力を発揮しながら大きく速度が上がるのに対して、ID群では小さな力を出して時間をかけてゆっくりと速度をあげる特徴がみられた。4種類の動作毎に各群男女それぞれのグループで力-速度曲線をみた。その結果、non-ID群は、なめらかな曲線を示すのに対して、ID群は蛇行する曲線を示した。このパターンの違いが瞬発的動作におけるID群の筋出力特性であると考えられる。
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