多重共線性とリッジ回帰法の適用性
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概要
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経済現象を計量的に分析する用具としての最少自乗法は今日広範に適用されていて,その重要性については議論の余地を残さないものである。しかし,最少自乗法それ自体にもその適用上においていくつかの未だ十分解明されていない問題を内包していることも事実である。なかでも線型重合の問題はしばしば議論されるものの一つであり,その十分な解決方法が必ずしも開発されている訳ではなく,最少自乗法を適用する場合に十分配慮しなければならない問題である。本稿は説明変数の数が2個以上のコプ・タグラス型生産関数を中心に線型重合の影響やそれの一つの解決方法としてのリッジ回帰法の適用を試みたものである。全般的な内容としては計測結果の経済的な解釈よりも線型重合の解決方法として,リッジ回帰法の適用性や限界性を究明することに重点がおかれる。なお本稿で使われているデーターは,農林省帯広統計事務所が昭和45年に行った牛乳生産費調査のうち,東北海道に立地する酪農経営55戸のデータである。分析結果より本稿の範囲内で導かれた知見を整理すると以下のごとくである。第1に,線型重合の影響を強く受けている変数であるほどリッジ回帰法の適用と共にパラメータがより急激な変化をみせながら次第に安定してきた。第2に,線型重合によるパラメータのバイアスを軽減させるためにパラメータの次元を減らす方法に比べ,リッジ回帰法はモデルの識別上のあやまりを回避することができるという点で有効である。第3に,線型重合の問題と関連して,パラメータのMSE(Mean Square Error)を基準とする限り,リッジ回帰法は最少自乗法より常に有効である。しかし,場合によってはリッジ回帰法のMSEの減少効果よりもパラメータのバイアス効果がより大きくなって結果を悪化させる可能性もある。最後に,リッジ回帰法は説明変数相互間の相関が高い場合,パラメータの安定性を要求する予測モデルや最少自乗法によって計測されたパラメータの信頼性をチェックするに当って有効に使うこともできると思われる。しかし,そのためには計測モデルに関する十分な事前的情報を必要とするのは当然であろう。
- 1977-01-17
著者
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