十勝地方における農業機械の共同所有と共同利用の経済的評価
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概要
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分散小規模農家の存在は多くの国において,農業機械化の大きな制約条件となっている。その理由の1つは,小規模農家に合致するようには農業機械の能力を小型化し,価格を引き下げるということが必ずしも可能でないからである。したがって,小規模農家による農業機械の共同所有・共同利用は小規模経営の機械化を考える場合に必要なことである。さまざまな機械の共同所有・共同利用の形態があり,それぞれの農家の異なった社会経済的条件のもとで得失を持つ。本研究のおもな目的は,個別利用に比べた場合の機械共同利用の相対的有利性を調べ,どのような共同利用体系のもとでそれらの共同利用が有利となるかを調べることであった。既往の研究によると,強く機械の共同所有・利用の形態に影響する要因としては,資本費用や労働必要量の節約および,適期作業の可能性があげられている。実態調査は昭和49年の夏に十勝地方の3つの町村-帯広市川西町,中札内村および,大樹町-で行われた。調査結果によると,すべての機械を個人所有している農家はきわめて少なく,とくに酪農家においては皆無であった。共同のタイプとして近隣農家による共同所有(もちまわり利用),機械利用組合,大型機械センター,レンタルおよびリースの4つの方式が観察され,それらの諸方式は,互いに組み合わされて農家と結びついている。4つの利用形態のうちで機械利用組合はもっとも一般的であり,大型機械センターとレンタル・リース方式については農協によって運営されているばあいが多い。機械の共同利用方式には,機械導入についてのさまざまな政府の補助金政策が大きく影響し,このことが組合の濫立を促進すると同時に,他方で機械の重複・不効率利用をも生み出している。さまざまな経営形態をとっている農家が構成員となっている機械利用組合では,それぞれの農家の要求を満たすだけの機械をもっておらず,1戸の農家が2個所ないし3個所の利用組合に加盟している場合が多い。混同経営のばあいには,とくにそうである。機械利用組合の成立条件としては,構成員のあいだで経営形態や,規模,圃場条件が類似しており,共同的態度が強く,構成員間の相互信頼と共同作業に対する積極的参加がみられることが必要である。構成員の数は余り多くないことが望ましく,総面積が機械能力を超えないことが必要である。大型機械センターはすべての農作業機械の遂行を考えるよりは,むしろ通例の機械利用組合方式では経済的に処理しえない作業を対象とすべきであり,適期作業と高度の作業技術が要求され,機械が高価であるばあいに適当な方式である。レンタル・リース方式は農家の財政力が低いところで一般的であるが,所得の増大につれて,共同機械利用の別の形へ移行する傾向がある。この調査研究を通じて,次のような勧告が可能となろう。1.酪農経営のばあい,トラクターを必要とする日常的業務があるため,共同利用とは別に,中型トラクター1〜2台の個人所有が必要である。飼料作物のみの耕作のばあいにはこのほかに,大型機械センター方式の利用が望ましい。2.畑作農家のばあい,農作業期間が短いので機械利用組合方式が望まれるが,しかし経営規模がとくに大きい農家のばあいには,各種機械の個人所有の方が望ましいように思われる。それはトラクター,作業機の利用時間がふえ,固定費をかなり節減できることと,小規模農家のあいだに大規模農家が入ることは,さまざまな利害対立を農家のあいだに生み出すからである。大規模農家のばあいには,むしろ大型機械センターと結びつくべきであろう。3.畑作,酪農の両部門からなる混同経営のばあいには,相対的に小さな部門規模に対し,さまざまな機械が必要とされるので,とくに機械利用組合への全面参加が望ましい。
- 1977-01-17
著者
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