「男性保育者」研究の動向 : 男性保育者に求められる資質・役割に関する研究動向とその展望
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概要
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本研究は,1976年から2005年までに提出された「男性保育者」をキーワードとして持つ研究論文58件について,その研究内容を時系列を基に分析することによって今日の研究動向を探り,男性保育者を取り巻く現状と今後の研究課題を明らかにしていくための手がかりを得ようとするものである。「男性保育者」研究は,それぞれの時代における社会的背景と関連しながら,1977年前後の男性保育者の存在の是非を問う時期を経た後,特に1996年以降,論文数の急増とも相俟って,資質や役割を問う視点が生まれてきたことが明らかになった。本稿では,この男性保育者の資質や役割についての研究を,(1)現場における男性保育者に関する意識調査(2)男性保育者自身の認識の変容(3)ジェンダー等の視点から男性の社会的意義に着目した研究の3つの類型に分けて分析を行った。その結果,これらの研究は類型に関わらず,その存在意義を性役割分業意識に基づく資質や役割を超えたところに見出そうとする視点,つまり性差に関わらず「保育者としての専門性」を求める姿勢を共通軸としてもつことが特徴として見出された。さらに,この専門性追究のために,「保育者としての専門性」探究の端緒としての養成過程のあり方,男性保育者に対する現場の実際と理念の乖離,「自らの保育」を探究するためのキャリア形成に必要な環境,男性保育者を取り巻くコミュニティのもつ関係構造の読み解きなどが,今後必要とされる研究課題として浮かび上がった。
- 2007-03-17