大脳神経回路網形成に関与する遺伝子群の検索: Poly(A)^+ mRNA fingerinting by arbitrary primers (PRAP)法による試み(<特集>複雑系の展望-複雑系若手の立場から)
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概要
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哺乳類の大脳神経回路網形成で最も重要な過程は「1余剰な神経細胞,シナプスの産生」,「2高感受性期における活動依存的神経回路の選抜」,「3低感受性期への移行」である.この過程を支える分子機構を明らかにする第一歩として,生後マウスの大脳において時期特異的に発現する遺伝子の検出を試みた.まず新しい遺伝子発現比較法の開発に着手し,この結果,Poly(A)^+ mRNA fingerprinting by arbitrary primers (PRAP)法という新しいDifferential display (DD)型遺伝子発現比較法を開発した.PRAP法で得られる遺伝子断片は,mRNAの3'末端非翻訳領域を選択的には増幅せず,翻訳領域の配列情報を高確率で入手することができるようになった.さらに,従来のDD型遺伝子発現比較法全てに対して適応可能な遺伝子検索の確率論的基盤を整備した.次にPRAP法を用いて生後0,1,2,4,6週齢のマウス大脳における遺伝子発現を比較し,発現に差の見られたいくつかの遺伝子断片についてノーザンブロット解析と塩基配列決定を試みた.パイロット研究の結果,相同性をもった複数種のGタンパクが,生後のマウス大脳において,時期特異的に発現していることが示された.
- 物性研究刊行会の論文
- 1997-04-20