N-アセチルグルタミン酸合成酵素の活性変化による尿素合成の制御機構
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概要
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尿素回路は単に受動的な窒素終末処理機構であるにとどまらず,生体の窒素平衡を維持する積極的な役割をになっている。尿素合成経路の初段酵素に必須の活性化物質であり,同時に尿素合成を調節する主要因のひとつであるN-アセチルグルタミン酸(AGA)を合成する特異的な酵素(AGA合成酵素)の生理的な意義を明らかにするため,in vivoでの食餌条件に対応する本酵素活性の変化に焦点をしぼって実験を行い,以下の結果を得た。1)マウスを1日3時間の制限給餌で飼育してAGA合成酵素活性を経時的に測定したところ,摂食開始後6〜9時間にピークをもつ活性の日内変動が明らかになった。さらにピークがおもにアルギニンによる酵素の活性化倍率の上昇によるものであるところから,AGA合成酵素蛋白質の何らかの質的変換による調節機構の存在が示唆された。2)蛋白質含有量の異る合成食餌でマウスを飼育し8日間にわたる酵素活性の変化をしらべたところ,20%カゼイン食群にくらべて60%カゼイン食群で活性はやや上昇し,無カゼイン食では著しく低下した。この変化は同時に測定した尿素回路の3酵素の活性変化とほぼ同調していた。このことはAGA合成酵素と尿素回路との緊密な連関を証明するとともに,AGAが長期的には合成酵素の量の変化によって制御されていることを示している。