ラット肝浮遊細胞による尿素合成調節機構の研究
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概要
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ラット肝臓を酵素処理して得た浮遊細胞を用いて,尿素合成の調節機構をさらに明らかにしようとした。得られた細胞は高い糖新生能とグルカゴン感受性を有し,肝細胞としての高次の機能を保持しているものと考えられた。生体外実験系としての尿素合成に至適な条件を得るため,まずメジウムを検討すると,Krebs-Henseleit重炭酸緩衝液はKrebs original Ringer燐酸緩衝液に比して約2倍の尿素合成を与えた。さらにオルニチンは尿素合成を著明に促進し,5mMオルニチンは最大の活性化(2〜3倍)を与えた。至適条件での尿素合成活性(0.75μmol/hr/mg蛋白質)はin vioでの肝の尿素合成活性にほぼ匹敵した。この系を用い,高アンモニア血症などReye症候群と酷似の症状を起すことが知られるpent-4-enoic acidの尿素合成阻害の機構をしらべた。細胞を0.05,0.1および0.4mMのpent-4-enoic acidと40分間インキュベートすると,尿素合成はそれぞれ対照の82,50,13%,に低下した。この時,尿素合成を増減させうる因子であるアセチルグルタミン酸(尿素合成経路の初段酵素の必須活性化因子)の細胞内準位は各々対照の93,55,および25%に低下していた。また,pent-4-enoic acidはATPの産性を減少させ,これによって尿素合成の阻害を起すとする報告もあるが,尿素合成を約60%に低下させても,ATP準位の低下を認めえなかった。この際,アセチルグルタミン酸の前駆物質,アセチルCoAの減少がみられ,これがアセチルグルタミン酸準位低下の原因であることが示唆された。以上の結果は,肝浮遊細胞の系が尿素合成の調節機構の解析に有利な系であることを示し,さらにpent-4-enoic acidによる尿素合成阻害の要因がアセチルグルタミン酸準位の低下であることを強く示唆するとともに,アセチルグルタミン酸を介する尿素合成調節機構の重要性を示している。
- 千葉大学の論文