Herpesvirus hominis-II型感染細胞における形態学的変化に関する実験的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
腟細胞診により,稀にしか検出することが出来ないHerpesvirus hominis(以下HVH)***感染の診断に寄与するため,培養細胞およびウサギにHVH-II型標準株を接種し,多角的に経時的観察を試みた。1. Papanicolaou染色によるHVH-II型感染Vero細胞の形態学的な経時変化として最初に認められる所見は,細胞質好塩基性の亢進である。以下核クロマチン不均等分布,核不透明化,核クロマチン辺縁付着,多核形成の順で変化が見られる。完全な核小体消失および典型的すりガラス様核の出現は遅れる。2.HVH感染の特徴的な諸所見について,出現頻度の検討を試みた。最も特徴的所見といわれる核内封入体は,培養細胞およびウサギ腟細胞診の両者共に,見い出すことが出来なかった。多核細胞は高頻度に出現した。培養細胞ではすべての感染単核細胞に,核縁肥厚,すりガラス様核を認めた。核相互moldingの出現頻度は低かった。3.細胞化学的染色により,細胞質RNA増量および多核形成に関連すると考えられるATP-aseやG-6-PDHの著明な活性充進を示す感染細胞が多数認められた。4.ウサギHVH-II型経腟接種による腟細胞診に最も高頻度に認められた所見は,核縁肥厚を欠く核無構造多核細胞であった。5.ウサギ腟細胞診により感染細胞を採取出来る期間は1週間前後,またウイルス分離可能期間は10日前後であった。以上の結果から,HVH感染の最も特徴的所見といわれる核内封入体が認められなくても,出現頻度の高い多核細胞に,すりガラス様核,無構造核,核縁肥厚,細胞質好塩基性亢進を認めれば,HVH感染と診断してもよいと思われる。ウサギ腟細胞診およびウイルス分離の両者共,陽性期間は短く,ヒトにおけるHVH***感染検出の低頻度を示唆するものと考える。
- 千葉大学の論文