Wilson病の臨床的研究 : とくに骨・関節症状と神経精神症状との関連について
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概要
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wilson病自験9例(男5,女4)の初発症状出現(平均10.8才)から診断確定に至る経過を詳細に検討し早期診断上意義あるいくつかの所見を得たが,とくに従来あまり注目されていない骨・関節症状について報告する。全例にKaiser-Fleischer角膜輪陽性,ceruloplasminおよび銅代謝の異常を認めた。骨・関節症状を現わした症例は8例(膝関節痛7,骨変形7,特発骨折3)におよび,レ線上では全9例に骨の萎縮,粗鬆化,変形などを認めた。初発症状と経過により次ぎの4型に分類した。I型:骨・関節症状で初発したもの6例(平均10.1才),II型:神経精神症状と骨・関節症状の同時期初発1例(13.6才),III型:神経精神症状で初発したもの1例(13才),IV型:肝・腎症状で初発したもの1例(10才)。初発症状とその後に発現した症状との時間的間隙は,I型は神経精神症状を平均2.4年後に,III型は骨・関節症状を1年後に,IV型は神経精神症状を6年後に現わした。各型の神経精神症状の内容を詳細に検討したが,それぞれの特徴的パターンは見出し難い。診断確定時のレ線検査では各型に種々の骨変化を得たが,骨・関節症状で初発しないII,III,IV型もレ線上の変化が神経精神症状の発現以前に存在したと推測された。したがって,全身性の代謝異常に基く本病では従来注目されている神経精神症状,肝症状にとどまらず,より以上に骨・関節所見に着目して早期に診断と治療を行なう必要のあることを示唆した。
- 千葉大学の論文