急性散在性脳脊髄炎の臨床病理学的研究 : とくに日本における剖検例について
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概要
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自験例を含むわが国の急性経過をとった散在性脳脊髄炎の剖検23例について,病理形態学的に静脈周囲性脳脊髄炎の形態を示すA群と,より大きな脱髄斑を形成したB群とに大別し,それらの臨床像を比較検討し,それぞれに特徴的な形態を呈する因子について考察した。年令別では,A群が平均19才,B群36.8才,性別および前駆期聞の長短には両群の間に差異はない。全経過はA群がより短く,B群は70%が2週〜3ヵ月である。前駆症状には明らかな差異はない。症状はA群では,意識障害,髄膜刺激症状,痙攣などの一般症状が多く,B群では運動・知覚障害,膀胱直腸障害,脳神経麻痺などの局所症状が高頻度に出現し,病変の局在との関連が考えられる。低年令層では,急性散在性脳脊髄炎はより急激な経過をとり,主として大脳の一般症状がみられ,病理形態学的には静脈周囲性の小脱髄巣を示すのに対し,成年層では遷延傾向があり多くは局所症状を呈し,病理学的には融合性の大きな脱髄を形成する傾向がある。但し,低年令層でも遷延してB群にみられるような病変形態への移行を示すものや,成年層でもA群類似の病変形態を呈するものが例外的に見られる。これらは罹患年令,個体の素質,罹病期間,中枢神経組織の個体差などの諸因子に関連するものと考える。