分層植皮後の色素増強反応の機序 : 動的表皮メラニン機構による新しい考察
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概要
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分層植皮後に認められる色素増強の機序を明らかにするため,(1)表皮内剥離後の色素増強,(2)分層植皮後の色素増強,(3)8-メトキシソラーレン(8-MOP)外用+長波長紫外線(UVA)照射にて十分色素増強させた皮膚をさらに植皮した後の色調の変化,を表皮剥離DOPA反応及び電顕用標本にて比較検討した。(4)表皮のturnover速度を調べるため,1%オスミウム酸エタノール溶液を皮膚のマーカーとして用い,その消失期間を観察した。表皮剥離DOPA反応では,(1),(2),(3)のいずれにおいてもDOPA陽性のメラノサイトの数はコントロールに比し大きな変化はなかった。電顕用標本では,メラノソームの分布様式の変化は認められなかったが,(1),(2)においてはメラノソームの数の著しい増加がみられた。(3)においては植皮後メラノソームの数の増加は認められなかった。表皮のturnover速度では,植皮部位は正常部位に比べてturnover速度の低下が観察された。以上の結果,分層植皮における色素増強は,メラノサイトの機能亢進によるメラノソームの単純な数の増加であり,質的な変化ではなく,植皮後の表皮turnover速度低下と相まって1個のケラチノサイト当りのメラノソームの数がさらに増加するためであることがわかった。それはepidermal melanin unitの量的変化であり,8-MOPとUVAによるメラノソームの質的変化による色素増強反応とは根本的にその機序を異にすることが示唆された。