アスペルギルス感染に対する宿主防御機構に関する研究
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概要
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真菌の日和見感染に対する防御機構を調べる目的で,胸腺を欠損するヌードマウスにAspergillus fumigatus K-2株の胞子を1×10^6個静脈感染させ,その防御反応について胸腺を有するヘテロマウスと比較した。本株は脳に対する侵襲性を有している。結果として接種後30日目まで両群とも大部分が生存し,12日目までの菌の臓器内分布では,脳においては両群とも5日目まで菌が増殖し以後減少する。その他の臓器,肝,腎,脾にも菌は認められたが,量的に両群の間に差はなく,また肺には菌はほとんど認められなかった。病理組織学的にみて,病変は主に脳に認められた。接種後3日目まで菌糸が認められ,この時期に多核白血球(PMN)の浸潤が最大となり,以後単核の細胞の出現と共に治癒過程へと移行していった。この事実から本菌の脳における排除にはPMNが主要な役割を果たすことが示唆された。一方,両群の腹腔内マクロファージの本菌に対する,in vitroの食作用にも差は見い出せなった。そこでマクロファージの作用を調べるため両群の背景となっているBALB/cマウスにマクロファージ阻害剤のカラギーナンを投与したところ,本菌に対する感受性が著しく増加した。以上から本菌の静脈感染に対してはPMN,マクロファージが防御因子として働き,T細胞の関与はほとんどないと考えられる。
- 千葉大学の論文