人類学"at home town" : 地域社会への貢献をめぐる日本の人類学の諸問題(<特集>大学-地域連携時代の文化人類学)
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概要
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本稿の目的は、X県における在日外国人問題と「多文化共生」政策の事例を記述し、地域社会への直接的な貢献を意図する際に日本の人類学者が検討すべき二つの問題点を指摘することにある。まず、第一点は、日本の人類学は日本社会全体や日本の地域社会を研究対象とする場合の方法論的議論、アプローチの検討を行って来なかったことに関する問題である。具体的には、日本社会における行政システム、政治過程などの政策文化に関する研究が不足しているため、研究調査の成果を地域社会に還元する有効な手段をもてないでいる。ついで第二点は、今日の日本社会における「文化」概念と人類学者の文化概念のギャップの問題である。今日の日本社会特に地域社会では、「政治の文化化」、「経済の文化化」の現象が起きており、そこでの「文化」概念は人類学における文化概念の議論とは別に構築され、両者の間には大きなギャップがある。このギャップのもたらす問題は、文化人類学者が地域社会への貢献を要請される場合に露呈する。つまり、地方自治体、地域社会の人々の要望と、人類学者の研究調査とそれに基づく社会的貢献がしばしば齟齬を来たす要因となっている。このギャップが何かを検討するためには、地域社会と、これを包含する日本社会におけるそれぞれのレベルの「文化」概念の構築のプロセス、その意味作用に関する考察が人類学者に要請されている。現段階では日本の人類学は、これらの課題に十分応える方法論を持っていない。このような問題の背景には、人類学者の日本社会におけるポジショナリティが十分に議論されていないという問題がある。本稿では「人類学at home town」として、これをあらためて検討し、人類学者と地域社会とが同じ地平に立つことの理論化の必要性を提示する。
- 2007-09-30
著者
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