機械的負荷による顎関節炎モデルの開発と関節構成組織の病態学的変化に関する研究
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概要
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目的:これまでに多くの顎関節症の病態生理に関する研究がなされているが,その発症原因は現在のところ解明されていない。顎関節症の原因および病態解明や新しい治療法を開発するためには,顎関節症を誘導する,再現性のある動物モデルが必要であると思われる。本実験では,家兎を用いて機械的負荷を加えて顎関節炎を誘導するモデルを作製し,経時的に観察を行い機械的負荷が顎関節組織に与える影響を検討した。対象と方法:20羽の家兎の眼窩下縁と下顎角前切痕の間に1Nの牽引力となるようにコイルスプリングを装着した。また6羽12関節を負荷をかけない対照群とした。負荷後3日,2週,4週,8週のそれぞれの時点で滑液および顎関節組織を採取し,生化学的および組織学的評価を行った。結果:負荷群においては,今回の観察期間において滑膜炎がみられた。組織学的評価では滑膜炎の強度は4週群でピークとなり,その後,緩やかな改善を示す所見がみられた。関節軟骨組織は経時的に破壊が進んでいたが,8週群では下顎頭の形態変化とともに軟骨組織の増加がみられた。負荷群の滑液解析では総蛋白量および炎症性サイトカイン量が対照群と比べ増加していた。また95kDa以上の比較的高分子量の蛋白が増加していた。結論 : 家兎顎関節へ機械的負荷を加えることにより滑膜炎が誘導された。そして経時的に下顎頭の形態変化と軟骨破壊がみられたが,そのピークを過ぎると滑膜炎は軽快を示し,リモデリングによる骨,軟骨の形成がみられた。これらの結果から,家兎の顎関節構成組織は過剰な機械的負荷により炎症が起こり,一時的に損傷されるが,その後,負荷に対して適応していく可能性が示唆された。
- 金沢医科大学の論文