慢性胃炎症例におけるHelicobacter pylori除菌前後の血小板数および動脈硬化関連因子の検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
慢性胃炎症例および虚血性心疾患に関与するHelicobacter pylori (H. pylori)に対する除菌療法後の血小板数ならびに動脈硬化関連マーカーの長期的推移を検討した。対象は虚血性心疾患合併28例を含め,H. pylori陽性慢性胃炎と診断され,除菌療法が施行された89例である。血小板数,C-reactive protein (CRP),動脈硬化関連マーカー,血清サイトカイン(n=9)の変化をH. pylori除菌前,除菌後3ヶ月以内,6ヶ月後,12ヶ月後に測定した。除菌成功群(n=82)での血小板数は,除菌前247±57(×10^3/μ1),除菌終了後では256±64(×10^3/μ1)と有意な増加を認めた(p=0.0327)。しかし,長期観察では,除菌6ヶ月後,247±57(×10^3/μ1)(P=0.5865),12ヶ月後244±59(×10^3/μ1)(P=0.8797)と除菌前値に近い値に復した。CRPは除菌前後で共に陰性であったものは41例,除菌前に陽性で,除菌後に陰性化したのは8例,除菌後に陰性化しなかったが低下したものは2例で,除菌後に有意に低下した(p=0.0108)。除菌不成功例(n=7)では血小板数,CRPに有意な変化は認められなかった。虚血性心疾患合併例(n=28)では,除菌後に,統計学的に有意ではないものの血小板数の増加を認めた。また,CRPは除菌後に有意な低下を認めた(P=0.0431)。除菌後に虚血性心疾患のイベントが生じた例は認めなかった。動脈硬化関連マーカー,血清サイトカインは除菌前後で不変であった。以上の結果から,H. pylori除菌療法により血小板数の増加は一過性に増加したが6ヶ月以降は前値に復することが示され,この上昇は除菌不成功例では認められないことから,H. pylori感染の消失に伴う現象である可能性が示唆された。