ストレス環境下における細菌の増殖と形態変化
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概要
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食品の製造過程では,食品の品質低下防止および品質保持のために食品への様々な処理が行なわれる。これらの処理が不十分な場合,食品中の細菌は生残し,生残した菌体は,より厳しい処理条件に対しても適応できるようになる。本研究では加熱,塩分および三杯酢について,細菌の生存に不利であるが生残する程度のストレスを非芽胞形成細菌に負荷し,その生育状況や形態変化を検討した。走査型電子顕微鏡による観察結果から,大腸菌MC4100株では,50℃および三杯酢処理により細菌細胞が桿状から球状化する傾向が認められた。黄色ブドウ球菌NCTC8325株では,10%NaCl存在下ではコントロールと比較してやや細胞が大きくなり,また5%NaCl存在下では細胞間隙が分泌物のようなもので満たされている顕微鏡像が得られた。三杯酢で処理をすると,細胞が単独化する傾向が認められた。2種類の供試菌は,三杯酢中では1時間後にLB寒天培地上でのコロニー形成能を失うが,回復培地で培養すると再び寒天培地上でコロニーを形成した。三杯酢処理下では「生きているが通常の培地では培養できない」状態,すなわちVBNCの状態で存在していることが示唆された。
- 2006-12-10