戦後近代建築家による都市デザインの展開 : 都市の協働設計の国際化
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概要
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本論は戦後の近代建築運動を都市デザインの視点からとらえ、近代都市デザイン運動を近代建築史において位置づける事を目的とする研究の一部である。本論では、近代建築運動のひとつの特徴として、建築家のコラボレーションに着目した。建築家のコラボレーションは近代建築運動が押し進められたCIAMの結成時に提唱された概念である。特に、第二次世界大戦後、建築家が相互に連携を深め、第二次世界大戦後の都市の再建/復興の一翼を担っていた時代(1945〜1970年)に行われた都市デザインプロジェクトのシステムやプロセスを分析するものである。特に、本論では第二次世界大戦後の西側諸国における民主主義の広まりを背景として、都市デザイン運動を民主主義の観点から考察を行っている。民主主義の世界的な広まりと協働による都市デザイン運動がどのように関連しているのか、そして、協働設計がどのような都市空間や都市形態を造り出してきたのかを論じた。民主主義の社会をどのように都市空間的に表現したのかを明らかにすることを、本論では試みている。そこで民主主義の形態に関して、社会学者のライプハルトは第二次世界大戦後の民主主義社会を4形態に分類している。この4分類の民主主義社会と都市デザインの方法や実現した都市空間の特質を本論ではまとめている。ライプハルトの民主主義社会のモデルを用いて、都市デザインのプロジェクトの特徴をとらえる事ができた。以上の内容を議論するために、1)民主主義と建築家のコラボレーションの関係を議論した、2)建築家の協働により形成された都市形態に関して分析した、3)ライプハルトの社会モデルを設計プロセスに適用し、建築家のプロジェクトへの参加方法の観点から都市デザインプロジェクトを分析した、こうした分析から、4)民主主義の理念や理想を都市計画的に表現する手段として、近代の建築家たちが民主主義的な設計方法(プロセス)を用いて戦後の都市再建を押し進めていったことを議論し、さらに5)都市形態を民主主義の形態と比較した.その結果、アメリカ型の民主主義を採用する国や地域における協働設計において、都市空間を構成する建築デザインが自由化し、都市景観デザインが多様化する傾向がある事がわかった。一方、オランダやベルギーなどにおける緩やかな民主主義を進める国における協働都市デザインにより、建築物はある一定のデザインの傾向を持つものの、全体として多様性が保証される、多様性と統合を実現する都市景観が形成されていることなど、民主主義の形態と都市デザインの間にある一定の関連がある事が把握できた。民主主義のひとつの現れである都市景観が戦後の民主主義国家の民主主義の形態を反映している事が明らかになった。以上の分析から、多様化の民主主義を目指したベネルクス三国の民主主義のモデルが多様性を指向する現代社会において、民主主義的な都市デザインを実現する可能性がある事を示した。
- 京都女子大学・京都女子大学短期大学部の論文
- 2007-02-08
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