歯周再生治療の変遷
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概要
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歯周治療の主な目的は,患者によるプラークコントロールを行いやすい口腔内環境を作り出すことにより,歯牙や歯周組織を長期的に維持することである.1970年代までは切除療法や歯肉歯槽粘膜形成外科(MGS)が歯周治療の主流であった.しかしながら,既に進行した重度歯周炎に切除療法を実施することにより,審美性と知覚過敏症の問題,さらには根面齲蝕発生の問題が指摘され始めた.また,切除療法による治癒の多くは,「修復」であり,「再生」は認められなかった.その後,様々な歯周組織再生療法が考案される中,真の歯周組織の再生を目指した新しい治療法として,1980年代に細胞遮断膜を用いた歯周組織誘導再生療法(GTR法)が考案された.このGTR法は,機械的再生療法と呼ばれているが,1990年代後半には,生物学的再生療法としてのEMD (Enamel Matrix Derivative)を用いた再生性療法が開始され,現在に至っている.EMDは歯根形成期における歯小嚢の間葉系細胞に作用し,エナメル質表面に無細胞性硬組織(無細胞性セメント質)を生成する.EMDを製品化したエムドゲインは,歯の発生期における歯周組織形成を模倣することで歯周病により失われた歯周組織を再生することができると考えられている.エムドゲインは,骨縁下欠損に対する治療法として十分な結果を得ている.また最近では,BMPやPDGF等の成長因子を歯周組織再生に応用する試みがなされている.種々のサイトカインが含まれたPRP (Platelet Rich Plasma,多血小板血漿)が実際に臨床の場で使用されている.そこで今回,歯周再生療法の変遷を追うとともに,重度歯周炎の治療に際して,現在当院で行っている歯周組織再生療法について症例を通して述べてみたいが,今後も歯周治療法は大きく変換し,歯周組織再生療法がますます発展していくと考えている.
- 2007-01-25
著者
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