原始中性子星内部のK中間子凝縮相(2001年度 素粒子奨学生 応募論文,第14回北海道原子核理論グループ研究会,地域スクール報告)
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概要
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中性子星は高密度核物質に関する天然の実験場を提供しており、天文学的観測と高密度核物質の理論とは古くから強く関連付いてきた。本論文では、超新星1987Aの観測に端を発する、原始中性子星の遅延崩壊の可能性を、温度効果、ニュートリノ閉じ込めの効果による高密度核物質の状態方程式の変化という視点から議論する。高密度核物質において発現の期待されるK中間子凝縮相をカイラル対称性に基づく枠組を用いて取り扱い、凝縮相を記述する熱力学関数を導く。また、重い星の重力崩壊により形成される原始中性子星は高温・高密度でかつニュートリノを閉じ込めていることを考慮し、これらの効果を取り入れた凝縮相の性質を調べ、状態方程式を導出する。さらにTOV方程式を解くことにより、原始中性子星の性質、特に遅延崩壊の可能性を調べる。相転移などを仮定しない通常核物質から成る原始中性子星は重力的安定に進化するが、K中間子凝縮相の発現を考慮した場合、一部の原始中性子星はニュートリノの解放に伴い、安定性を失い質量の小さいブラックホールへと遅延崩壊することを示す。
- 2001-09-20