点過程論によるエネルギー準位統計の数学的基礎付け
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概要
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直線あるいは一般の空間上のランダムな点配置のことを確率論では点過程(point process)と称し、詳しく研究されている。ランダム行列やAndersonモデルのように、統計性を含む量子ハミルトニアンのスペクトルは現象論的には点過程と見ることができる。また量子カオスの研究におけるように、本来統計性をもたないハミルトニアンのスペクトルを、あたかも点過程の典型的な実現であるかのようにみなしてその揺らぎを議論することがある。点過程の理論は準位統計の専門家にはこれまであまり知られていなかったようであるが、点過程というものの数学的な取り扱いには意外にデリケートな部分もあるのである。特に点と点の間隔分布については直観に反するような事実がいくつかある。本稿の日的は点過程論の概略を解説しつつ、その準位統計の現象論との対応を考えることである。準位統計の背後にあるAnderson転移や量子カオスの本質に迫るには至ってないが、量子準位というものを統計的に見ることの意味合いを確率論の立場から考えてみたかったのである。物理学者からの自由な批判を期待する。特に第8節についてそう思う。なお本稿は1998年6月に日本大学理工学部物理学教室で行なった筆者の講義に基づいている。このような機会を与えて下さった糸井千岳氏に深く感謝する。また筆者の拙い講義に耳を傾けて下さった出席者の方々にも心より感謝したいと思う。
- 2000-03-20
著者
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