光学応答からみたPbHPO_4の強誘電構造相転移
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概要
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擬一次元水素結合型強誘電体であるPbHPO_4(LHP)について反射・吸収・発光・励起スペクトルを測定した。LHPにおける自発分極Psは2次相転移を反映し、強誘電相転移温度Tc=310Kより低温で徐々に増大し180K付近で飽和する為、広い温度領域でPsの発達に伴う電子構造の変化を追跡する事が出来る。反射スペクトルに強誘電相、常誘電相においても、Pb^<2+>イオン内遷移(6s→6p)に対応すると考えられる直接励起子に起因する分散型の構造が、基礎吸収端近傍に観測された。熱的な格子振動のゆらぎの効果を取り入れたアーバック則は良く成り立つが、他の絶縁体・半導体・アモルファスの結果と異なり、強誘電相、常誘電相において異なる点に収束する事がわかった。また得られたスティープネス係数は低温から180Kまで増大したのち減少し、Tc以上で一定となるような特異な温度依存性を示す事がわかった。LHPを低温で励起子吸収帯及びバンド間励起すると、ストークスシフトが大きくブロードなガウス型の形状を持つPb^<2+>イオンの自己束縛励起子に起因すると思われる発光帯が観測された。発光強度の温度依存性は180K以上の温度では通常のアレニウス型の熱活性過程では再現出来なかった。すなわちスティープネス係数や発光強度の温度依存性に見られた異常は、鉛の励起子準位が強誘電性と密接な関係がある事を強く示唆している。このようにLHPでは励起子が周りの環境と強く相互作用しながら安定に存在し、相転移現象の良いプローブとなる事が初めて明らかとなった。
- 物性研究刊行会の論文
- 1999-12-20