完全拘束系のダイナミクスと量子宇宙論(1996年度九州地区地域研究会:量子重力と量子宇宙論,地域スクール報告)
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概要
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正準量子重力理論における基本的な問題の一つに,ダイナミクスの抽出の問題がある.この講演では,この問題を解決するための一つの試みとして提案された,完全拘束系すなわちハミルトニアンが拘束条件のみの線形結合で与えられる系に対する量子論の新しい定式化(Web formalism)を紹介する[1,2].この定式化の基本的なアイデアは,ハミルトン拘束条件を,従来のDirac量子化のように状態ベクトルに対する拘束条件として課すのではなく,状態ベクトルの時間推進を表す演算子と見なす点にある.このため,状態空間は様々な'異なった時刻'に対応する状態を含み,通常の量子力学の状態空間に対応する各一定時刻での状態の集合は全状態空間の部分空間として実現される.これらの部分空間はハミルトニアン拘束作用素による時間推進で結ばれる.したがって,全状態空間は,無限個の同時刻状態空間を時間発展に対応するダイナミカルな写像(因果写像)でお互いにクモの巣のように編み上げた構造を持つ.例として,簡単なミニスーパースペース宇宙モデルから得られる完全拘束系に対して,この状態空間や因果写像の具体的な構造を決定する.
- 素粒子論グループ 素粒子研究編集部の論文
- 1997-01-20
著者
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