CTMRGによる拡張イジングモデルの解析
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概要
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臨界指数が系の詳細によらず一定の値をもつことを,臨界現象の普遍性(universality)という.普遍性には例外があり,たとえば,最近接相互作用Jと次近接相互作用J'をもつ正方格子イジングモデル(J-J'モデル)は相互作用の大きさの比により臨界指数が変化する.また,次近接相互作用J'と(最近接の)4体相互作用J_4をもつモデル(J'-J_4モデル)も臨界指数に相互作用依存性があり普遍性が破れている.本論文の目的は,この二つのモデルを含むJ-J'-J_4モデルの臨界指数を数値計算し,相互作用とスピンの大きさに対する臨界指数の依存性をしらべることである.数値計算で臨界指数を求めるために,有限系のデータを有限サイズスケーリングにより解析した.有限系の物理量を計算するには,角転送行列くりこみ群(Corner Transfer Matrix Renormalization Group, CTMRG)の方法をもちいた.CTMRGは,角転送行列(CTM)を密度行列くりこみ群に導入した方法で,サイズの大きな系の物理量を精度良く計算でき,有限サイズスケーリングによる解析に有効である.結果として,J-J'-J_4モデルでは,基底スピン配列が4重に縮退している領域で普遍性が破れており,基底状態が強磁性または反強磁性の配置のどちらかに限定される場合は普遍性が保たれることが確認された.このモデルにおいて普遍性が破れ得るのは,性質が異なる基底状態が縮退していて秩序パラメータが二つの成分をもつ場合であることが検証された.また,臨界指数に相互作用依存性がある領域で,スピン1/2とスピン1のときの臨界指数vを比較すると,両者は計算誤差の範囲内で一致した.このモデルでは,相互作用の比により普遍性が破れている場合でも,臨界指数がスピンの大きさには依存しないと結論される.
- 物性研究刊行会の論文
- 1997-11-20