勾配系,歪勾配系における安定性解析(応用解析チュートリアル,講義ノート)
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概要
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いわゆるactivator-inhibitor型の反応拡散系においては,安定な空間パターン,進行波,時間的振動,過渡的な時空間パターンの形成など,きわめて興味深い解の振る舞いが観測される.しかしながら,activator-inhibitor型の反応拡散系は順序保存系ではないこと,解の周りの線形化作用素が自己随伴ではないこと,従って固有値は実数とは限らずまた変分原理が成り立たないなど,一般的な解析にはいろいろな困難がともなう.そこで,意味のある解析を行うために系に特殊な構造を仮定する必要がある.たとえば,系に微小パラメータを導入して摂動諭的手法を用いて解析したり,あるいはパラメータの変化に伴う分岐構造から解全体の構造を把握するなどの方法をとる.本稿では,このような方向とは異なり,各種の反応拡散系の一般的に取り扱うために歪勾配構造と呼ばれる特殊な構造を導入し,その枠組みの中で空間パターンの安定性に関する解析を行うことを試みる.この歪勾配構造と呼ばれる構造はいわゆる勾配構造とは非線形項の符号が多少変わるだけであるが,その定性的振る舞いはまったく異なる一方で,数学的にはス少類似した構造を持っている.本稿では主に[16]の内容に基づき,歪勾配構造と勾配構造を対比させながら歪勾配反応拡散系の安定性解析について解説していく.
- 物性研究刊行会の論文
- 2002-05-20