中国帰国生徒における表現の意味理解に関する事例研究 : 代名詞の意味理解を手がかりにフッサールの言語論を導きとして
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概要
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本稿では筆者が中国帰国生徒に代名詞を教えた時の授業記録に基づき,彼らがいかに表現の意味を理解するかを明らかにした。フッサールによれば,想像心像は意味の担い手ではなく,代名詞には指示する意味と指示される意味という2つの意味があって,前者は普遍性を持ち,後者はその都度変動する。筆者の授業において生徒たちは,代名詞の意味理解に当たり,往々にしてその語から惹起される想像心像を持とうとし,それによって指示される意味をとらえようとする。対照的に筆者は,代名詞の理解に当たって,想像心像を持つこともなければ指示される意味をとらえようとすることもなく,指示する意味のみを理解する。指示する意味のみを抽出することは学校教育において学力を得るために必要不可欠である。最後に,生徒たちの人称代名詞の理解は彼らの他者経験を,また,指示代名詞の理解は彼らの事物認識の経験に基づくものであることを指摘した。
- 日本獣医生命科学大学の論文
- 2006-12-01