日本のベンチャーキャピタルの動向と課題 : 主に株式公開会社のベンチャーキャピタルを中心として
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
株式公開VCの機能は,将来有望なVBに資金を提供し,また,ハンズオンを遂行しIPO後のキャピタルゲインを獲得することにある。株式公開VCが投資先VBと投資契約を締結する理由は法的関係を明確化することであり,共に利害対立の緩和を図り,投資後のリスクの最小化を試みるものである。更に,VCファンドの利益を保護することにある。株式公開VCは,企業収益の変動性の高いシード/アーリー段階に投資し高収益を目標に経営方針を実施しているが,収益の安定性を図るためにバイアウト投資や事業再生ビジネスあるいは海外投資などの投資領域の拡大を展開してきている。株式公開VCは,ロックアップ条項に基づいてIPO後に株式売却を目的としているため安定株主になれないためIPOの銘柄を出資者に株式分配し売却時の意思決定を出資者の判断に委ねる方法も検討に値する。投資資金の「出口」には,キャピタルゲインと企業買収(M&A)の二つの方法の以外にも新規IPOの出口として,役員陣への売却,親会社・関連会社への売却などの兆候が見られる。株式公開VCに内在する利益相反の例として,同時に複数のファンドの運営においてファンドの性質が明確にされていないため有望な投資案件についてどのファンドに組み入れるかという問題が起こる可能性がある。利益相反問題は,多岐にわたる問題を包含しているため常に注意が必要である。今後の方向性として,株式公開VCは,投資業務に専念するとともに優秀なベンチャーキャピタリストの育成・資質向上のために成功報酬制度を推進することである。また,年金基金の取り込み,国内外の投資戦略,情報の非対称性の緩和,情報の開示性に力点を置かなければならない。
- 2007-03-25