日伊製造企業における新製品開発活動の実証比較
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概要
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今日の企業を取り巻く厳しい経営環境の中では,いかにして新製品を迅速に開発し,スムーズに市場に導入していくかを考えることが重要な経営課題となっている。新製品開発への取り組みを効果的に展開していくことは,単にその会社のマーケティング活動としての取り組みだけには留まらず,全社的にも大きな影響を及ぼすからである。新製品開発への取り組みは,自社製品全体に対する信頼性や魅力を高める可能性を秘めている点,また,製造費用を削減できる点等から,全社的な視点から考えた場合,経営戦略上の強力な施策のひとつとして捉えることが出来る。なお,今日の新製品開発を巡る競争では,時間という次元が重視されており,開発費用の削減と顧客ニーズへの迅速な対応のため,新製品開発・導入のサイクルをいかに短縮するかが鍵となっている。こうした状況を背景として,企業における新製品開発プロセスにおいては,職能間統合,開発フェーズのオーバーラップ,いくつかのフェーズを同時並行的に進めていくコンカレント・エンジニアリング等の新しいパラダイムが次々と考案され企業経営の現場において実施に移されている。こうした新しいパラダイムの生成とそれを実践する企業活動について詳細な研究をおこなうことは,今後の企業経営についての本質的な理解と新しい経営環境下における実務的な応用についての示唆を得る上で,欠かせない重要な課題である。筆者は現在,日本,米国,欧州を中心とする各国の研究者数十名による,世界の優れた製造企業についての国際的な実証研究プロジェクトに参画している。このプロジェクトは,世界の優れた製造企業が持つ共通要因を抽出するとともに,各企業の異なる状況要因がその競争力といかに結びついているか-地域間の相違が製造企業の戦略,システム,プラクティスに及ぼす影響やグローバルな競争力の規定要因-を明らかにすることを目的としたものである。調査対象国には日本,米国,英国,ドイツ,イタリア,カナダ,スペイン,北欧3国,オーストリア,韓国を含み,世界における主要な工業地域をすべて網羅した大規模なプロジェクトとなっている。世界各国の研究者との共同作業によって,分析のためのフレームワークを構築し,世界の主要製造企業(機械産業,電気機器産業,自動車産業の3業種)を対象として郵送による質問票調査でのデータ収集をおこない,業界横断的な比較による実証分析をおこなっている。このような研究プロジェクト参画の中で,イタリア研究者チームと共同して,特に新製品開発プロセスについての重点的な比較調査研究をおこなった。それは,わが国とイタリアの機械・電気機器メーカーに対しての質問票調査による実証研究であり,新製品開発成果をいかに捉えるべきかを考察し,さらに新製品開発における実践活動,新製品開発プロセス,新製品開発に関する戦略指針といった要因と新製品開発成果との関連を分析し,さらに,両国のデータを比較することによって国による新製品開発プロセスの現状や特性の違いを検証したものである。
- 拓殖大学の論文
- 2006-08-01
著者
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