フリーア美術館の精神の原点 : 宗教的・審美的包括主義とアメリカ第一次仏教ブーム : 1879-1907年
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概要
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近年、アメリカ研究者たちは、これまで以上にトランスナショナリズムに注目するようになってきた。こうした研究により、宗教、芸術作品、習慣、人々の国境を超えた動きが取り上げられてきている。本稿では、スミソニアン博物館フリーア美術館の100周年記念にあたり、チャールズ・ラング・フリーア(1854-1919)に着目する。その宗教観、審美観、さらに芸術品収集の実践を歴史的コンテクストの中で位置づけることにより、日米文化交流の一事例について考察する。フリーアは、1906年、収集した芸術作品の多くを、合衆国政府に寄贈した。現代のアメリカにおける仏教ブーム、そしてヴィクトリア朝期末における仏教の流行について言及したうえで、本稿では、フリーアの宗教観、審美的傾向、芸術品収集の実践が、信仰的危機からの救いを芸術に求めた同時代のエリート階級アメリカ人のそれと連動していたことを指摘する。東アジアの芸術作品、および、日本の影響を受けたアメリカ芸術作品を主要な所蔵とするフリーア美術館コレクションは、仏教へロマン主義的関心とヴィクトリア朝末期の宗教的、審美的包括主義への賛同の一表現であったことを提言したい。
- 2007-03-31