世田谷区の農地転用と農業委員会1960〜1975(<特集>日本不動産業の展開過程)
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概要
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1960年代から70年代前半にかけて, 世田谷区内では農地の急速な宅地化が進行した.宅地化は私鉄による沿線開発, デベロッパーによる大規模商業施設の開発, そして旺盛な住宅需要に牽引された.この過程で区内農家は大部分の農地を売り渡したが, 多くの農家は所有農地の一部を保有したまま賃貸住宅に転換し, 家賃収入を主要な収入源のひとつとするようになっていった.世田谷区農業委員会は区内農地の保護に尽力し, 不動産企業による賃貸住宅の建設や農地改革による創設自作農地の宅地化に強い抵抗を示した.しかし創設自作農地以外の農地において, 農家がアパート等の賃貸経営に参入することは黙認せざるを得ず, 60年代賃貸住宅建設の多くが「農家」経営の一環として行われる背景となった.都市計画法の線引きにより区内が市街化区域となった後は, 委員会の転用阻止機能は失われ, 賃貸を含め, 中小不動産企業による住宅化が活発化した.農業委員会の関心は専ら農地の宅地並み課税問題に収斂していった.
- 2007-03-09