隠れたる市民社会 : 引き延ばされた社会契約の結び直し(<特集>1990年代日本の思想変容)
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概要
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冷戦の終焉と湾岸戦争は日本の安全保障の考え方に転換を迫った.日本国憲法が掲げる平和主義は日本の海外での武力行使を禁じているし, 冷戦下であればアメリカはソ連や中国に対抗するために自動的に日米安保体制の継続を図った.しかし今や日本に何ができるかが問われるようになった.それは日本の市民社会が, 自分たちが作る政府に何をさせるかを改めて付託する社会契約の結び直しのチャンスを意味した.ときあたかも昭和天皇の死去やバブル経済の崩壊により先行きが不透明になる中で, 新しい市民社会の思想を創造する試みにはさまざまな困難が伴った.湾岸戦争を経て, 論壇では平和基本法ないしは安全保障基本法を制定する提言がなされたが, 世論はそれらを必ずしも十分には受けとめなかった.政治の争点はむしろ内向きの政治改革として設定された.そして日米安保条約の再定義が実現したとき, 日米関係は再び非対称な形で固定されることになった.
- 2006-09-30