乳児期の共同注意の発達における母親の支持的行動の役割
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概要
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本研究は,乳児期の対面相互交渉において子どもとの注意共有の状態を作り出すための養育者の行動に着目し,養育者の注意に関する支持的行動が二者間の共同注意の成立にいかに寄与しているのか,また二者間に成立した注意の質がいかにして共同注視から共同注意へと発達的に変化していくのかを明らかにすることを目的とした。家庭における1組の母子の対面相互交渉場面を乳児が2〜9カ月の時期に渡って縦断的に観察し,母親の行動と乳児の注視パターンおよび情動表出との関係を分析した。その結果,母子の相互交渉は「顔を見る,見せる」関係から発展し,母親による全面的な調整によって共同注視が成立する段階から,母子が互いの動きに協働して注意を向け合うことで共同注視が成立する段階,一時的に共同注視から始まる相互交渉が持続しなくなる段階を経て,二者の注意の対象が外的対象から心内対象へと移行し共同注意が成立する段階へ到達するというプロセスをたどった。またこの過程において,注意に関する母親の支持的行動は子どもの姿勢運動能力の発達に応じて変化し,こうした母親の支持的行動の変化が新しい相互交渉パターンの出現を導いていることが示された。このことから,養育者の注意に関する支持的行動には,子どもの共同注意行動を形成する役割のあることが示唆された。
- 2007-08-10