親の代わりに孫を養育する祖母の家族再形成
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概要
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親の代わりに第一責任者となって,孫の養育を担う祖母の調査を日本で先駆的に試みた。得られた知見は以下のとおりである。(1)〜(3)は本稿中の「家族適応」している祖母からの結論である。<BR>(1) 祖母の定位家族期の経験が生殖家族期の子育てに影響を与え,生殖家族期の子育てが十分でなかったことが孫の養育を正当化していた。<BR>(2) 祖母の「年齢」が若く,孫の「年齢」が低い方が,父方祖母にとって孫が「男の子」(直系ライン)である方が「家族適応」しやすい。<BR>(3) 祖母による孫の養育開始時の養育の「意味づけ」は,子育てが十分でなかった祖母の生殖家族期の子育てにあったが,子育て以上のことを成し得た結果,「生きがい」へと変化していた。「子育て」に対する満足度が養育の「意味づけ」に影響を与えていた。<BR>(4) ブール代数を用いた分析から養育の継続性のためには,身体的資源の「年齢」が必要条件となり,さらに経済的資源の「就業の継続」または規範的資源の「父方祖母と孫娘という組合せでないこと」が必要となっている。継続性を可能とさせないのは,経済的資源の「無職(専業主婦)」かつ規範的資源の「父方祖母と孫娘という組合せ」である。<BR>(5) 祖母の孫の養育を正当化する要因として精神的資源による家族の「全一性」があり,継続性を左右するものとして規範的資源である家族の「存続性」が認められ,限定的であるが戦前の日本的家族の特徴が維持されている。
- 2007-06-10