日本産のマツのシンクイムシ類Rhyacionia属(鱗翅目,ハマキガ科)の分類学的再検討
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概要
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1.日本から今までに記録されたRhyacionia属7種を再検討したところ,そのうち2種は誤同定に基づくものであり,確実に我が国に分布する種は次の5種に整理された:マツアカシンムシR. dativa,ワシヤシントメヒメハマキ(ハイマツアカシンムシ) R. washiyai,ニセマツアカヒメハマキR. pinivorana,マツツマアカシンムシR. simulata,アトシロモンヒメハマキR. vernalis. 2.ワシヤシントメヒメハマキR. washiyaiのタイプシリーズはその所在が長らく不明であったが,国立科学博物館に保管されていることが判明した.本種のホロタイプが原記載では指定されていなかったので,このタイプシリーズの中から♂成虫をレクトタイプに指定した.最近,本種はマツアカシンムシR. dativaの新参異名として扱われているが,両種は全く異なる種であった.本種は外部表徴において,ヨーロッパとロシアに分布するR. pinicolanaに類似するが,♂交尾器のcucullus腹方端に突起を持たないことで後者と識別できる.ハイマツアカシンムシとして北海道から記録された種は,真のR. pinicolanaでなく,本種であることが判明した.したがって,誤同定に基づくR. pinicolanaの日本からの発生記録は削除された. 3.今までR. duplanaの亜種とされてきたsimulataをヨーロッパ産のduplanaと比較した結果,♀交尾器のsignaの形態が異なるため, simulataを種の地位に復活させ,独立種マツツマアカシンムシR. simulataとして扱った. 4.松村が1917年にマツトビハマキEvetria buolianaの図の説明中に使用した, E. japoniellaという名称は,マツアカシンムシR. dativaの新参異名として扱われていたが,国際動物命名規約の条11.6と11.6.1に定められた「異名としての公表」に該当するため,本名称japoniellaは適格名でないと結論づけられた. 5. R. buolianaは日本に分布することになっているが,我が国でかつて本種とされたものはマツアカシンムシR. dativaであり,今までにR. buolianaの確実な標本は日本から得られていないことがわかった.このため,我が国からの本種の発生記録は削除された.
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 2007-05-25
著者
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- 世界のハマキガ科(鱗翅目)種名カタログ, Brown, J. W.(2005) Tortricidae (Lepidoptera)-In : World Catalogue of Insects 5 : 1-741. Apollo Books. ISBN87-88757-41-2. 960DKK (約17,000円)
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