母方由来組織のマイクロサテライト分析による樹木種子・果実・実生の種子親特定(<特集>マイクロサテライトマーカーは森林科学に何をもたらしたか?)
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概要
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多型性の高いマイクロサテライトマーカーを用いれば,植物自然個体群における親子解析が可能である。しかし,種子親から散布されて両親ともに不明になった次世代については,両親に由来するDNAの遺伝子型解析によって正確な母性・父性解析を行うことは困難である。そこで本総説では,種子親特定のための新しいアプローチとして,母方由来組織のDNAを用いる方法に注目した。種子・果実・実生に付随している果皮などの母方由来組織の遺伝子型はその種子親の遺伝子型と同じであるため,マイクロサテライト分析を用いた遺伝子型の照合によって,散布後の次世代についても正確に種子親を特定できる。ただし,母方由来組織の多くからは高品質DNAを得ることが難しいため,DNA抽出・精製法の選択,PCR時のアニーリング温度の設定,フラグメントサイズの格差が大きい場合の遺伝子型判読には特に注意が必要である。これらの点に留意して適切な解析を行えば,本手法は樹木の種子散布や繁殖成功など,植物繁殖生態に関する研究において大きな役割を果たすだろう。
- 一般社団法人日本森林学会の論文
- 2004-05-16