衛生動物の重要度の時間的・空間的変動
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概要
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京都府保健環境研究所で行う衛生動物等の同定検査は保健所に寄せられる住民からの相談の中で,一般的でなく窓口で対応をしきれなかったケースなどが対象となる.これら同定検査について,1970年代の155件(矢野,1980),1990年代の469件(中嶋ら,1998;中嶋ら,2001;中嶋,2001),2005年までの結果350件(中嶋,未発表)から検討した.人口10万人あたり1年間の検査数は1970年代1.76件,1990年代4.04件,2000年代4.95件と最近の増加傾向が明らかとなった.いずれの年代でも節足動物が検査の中心となり,1970年代と1990年代は5綱18目,2000年代4納21目と多岐にわたった.ハエ目,コウチュウ目,ハチ目,チョウ目の4目は1970年代から常に苦情や相談の対象となっており(1970年代:52%,1990年代:43%,2000年代:58%),典型的な衛生動物群といえるだろう.一方,ダニ目の検査数は大きな変動を示したが,衛生動物に対する人々の知識や意識が大きく変化するにつれ,その検査需要が変化した一例と考えられた.検査の理由をみると,不快の訴えがいずれの年代でも約半数を占め最も多かった.しかし最近は,その理由に自身や家族の健康,食の安全などの訴えがみられるようになり,社会の動きを反映していることを窺わせた.依頼の対象となった生物の名前を知ることで依頼者は納得し安心される例が多々あることから,現代社会における有害生物とは,身の回りにいる,訳がわからないが故に不安を引き起こす存在なのではないかと考えた.
- 日本環境動物昆虫学会の論文
- 2007-06-07
著者
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