アメリカにおけるホームレス状態への福祉政策と治安政策の「併存」に関する一考察
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概要
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本稿の目的は,近年のアメリカにおけるホームレス状態への福祉政策と治安政策の「併存」を説明することであり,ついで両政策の「併存」の意味を考察することである.まず,政策認識と政策対象から両政策の関係を分析することにより,近年に拡大する両政策の対象は同一ではなく,その関係は二律背反の原理に則していることが分かった.しかし,その治安政策の対象はホームレス状態での生活に強く関連する行為であるため,あたかも福祉政策の対象と同一であるかのようにとらえられている.また,「併存」する両政策はホームレスではない人々の利益を第一義的な目的として認識しており,ホームレスの承認はホームレスではない人々の承認に従属する.そして,この「併存」は,ホームレスを給付にも処罰にも「値する」とする矛盾したメッセージを伝えるため,両政策が生み出すホームレスの表象は葛藤的となる.この点に「併存」の欠陥がある.
- 2007-05-31
著者
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