慢性リウマチにおける関節炎の再燃と慢性化に関する研究
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概要
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慢性関節リウマチにおける関節炎の病態はなお未解決な点が多い。特に関節炎の慢性化と再燃を繰り返す機序の解明は治療上重要な課題となっている。そこで著者らは実験的関節炎と臨床材料とを比較検討してこれらの問題を究明しようとした。慢性関節リウマチの実験的関節炎モデルの一つであるDumondeとGlynnのantigen induced arthritis に同一抗原を腹腔内に注射したところ,以前にchallengeし関節炎を生じさせた関節にほぼ選択的に関節炎が再燃した。この場合,電顕で観察可能なferritinを抗原にして局在性を追跡した。再燃した関節炎はantigen induced arthritis に通常みられる関節炎とは異なり macrophage主体の炎症であった。抗原(ferritin) の腹腔内注射後12時間から72時間の間にmacrophageの浸潤はピークに達し,その後炎症は漸次消退する一退役の炎症経過をとった。多くのmacrophageにはsecondary lysosomeと考えられる大きさ0.25-3.50μ の多数の限界膜を有する空胞がみられ,しばしばその中にferritinが貧食されているのが観察された。一万,ferritinは注射後6時間から小さな凝集塊(大きさ10^<-2>〜10<-1>μ)の状態で滑膜の血管の基底膜や細胞筒質に観察され,challengeを受けていない対照側とは明かな量的差が認められた。又軟骨表層への抗原の沈着は観察されなかった。従ってchallenge側に惹起された関節炎はほとんどmacrophageの浸潤からなり,炎症の経過から遅延型アレルギーに属する炎症反応と考えられる。その発生機序は腹腔内注射された抗原が以前にchallengeをうけた関節の滑膜に到達し,そこで感作Tリンパ球と反応し,種々のリンホカインの放出によって遅延型アレルギ一反応が惹起されたと推測される。この事はantigeninduced arthritisでは感作Tリンパ球が当該関節局所に長期間存在している事を示唆し,抗原刺激によって容易に遅延裂アレルギー反応が惹起され,関節炎の再燃の原因となる事を示している。一方,200例の慢性関節リウマチの滑膜組織を検討した結果,今回の実験的関節炎と同様のmacrophageの浸潤を中心とする関節炎が認められたのは僅か5例にすぎなかった。しかし散在性のmacrophageの浸潤はほぼ普遍的な所見であり,慢性関節リウマチの滑膜炎においても,遅延型アレルギ一反応が関与していることが明らかにされた。
著者
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