タミル文献にみられるローカーヤタ
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
インドにおいて,唯物論を唱えるローカーヤタの歴史は長く,古来より常に,正統バラモン教,仏教,ジャイナ教による論駁の対象となっている.しかし,ローカーヤタの教義体系のすべてを著した書物は残っていない.仏教やジャイナ教等の他宗教が,ローカーヤタの教義に反駁するために,その教義を断片的に記述したものを通じて,その思想の一部を窺い知ることができるのみである.そして,パーリ語やサンスクリット語文献に残されたローカーヤタに関する記述から,その思想の全体像の構築を試みる研究は,これまで数多くなされてきている.タミル文献においても,仏教叙事詩Manimekalai(6-8世紀ごろ),ジャイナ教叙事詩Nilakeci(10世紀ごろ),シャイヴァ・シッダーンタの綱要書Civananacittiyar parapakkam(13世紀ごろ)等,他宗教の文献において,ローカーヤタの教義が取り上げられている.しかし,これまでのローカーヤタ研究では,タミル文献におけるローカーヤタについての記述が,詳細に取り上げられたことはなかった.したがって,本論文では,まず,上記のタミル文献において,ローカーヤタに関してどのような記述がなされているかを通覧し,それらの記述から,タミル・ナードゥにおいて,ローカーヤタの存在が人々に良く知れ渡っていたことを明らかにした.また,本論文で取り上げたManimeklai,Nilakeciは,文学というジャンルに属するものの,これらの作品の作者が,哲学にも精通していたことは明らかであることから,その記述は,十分に信頼できるものである.したがって,今後のローカーヤタ研究では,タミル文献におけるローカーヤタの記述も参照されるべきであろう.
- 2007-03-25
著者
関連論文
- タミル文献にみられるローカーヤタ
- タミル化された『ナラ王物語』 : Nalavenpaをめぐって
- タミル・バクティの「情熱」 : アールヴァールを例に
- Manimekalaiの論理学部分について : 後世における付加の可能性