「他者」としての「日本女性」 : 欧米の「水子供養言説」批判(<特集>ジェンダーの人類学-その困難からの展開)
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概要
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「文明化」された場所での「未開」の人々の展示が永続的な権力の不均衡をもたらす、とのクリフォードの主張はよく知られている。「エキゾティックな展示」の歴史は、地域研究において特にジェンダー化されて現れることが多い。欧米の日本研究においては現在でも植民地主義的フェミニズムの表象が流通しており、オリエンタリズム批判は充分有効であるといえる。近年、宗教研究の分野では、中絶された胎児である水子の供養儀礼をめぐって、日本の女性を胎児の崇りに怯える無抵抗な「異質な他者」と描くテキストが多くの支持を得ている。これは現在でもフェミニスト宗教研究に影響力をもつM.ディリーが女性と宗教に関する言説のなかで、非西洋の女性たちを受動的な犠牲者として不均衡な力関係のなかに封じこめて描いてしまったことと同質である。本稿では、地域研究、フェミニズム、宗教学、ポストコロニアル批判などのジャンルが交差する地点で、日本の女性と宗教をめぐる表象の問いに焦点をしぼり、地域研究がどのように「差異」を実体化して、「我々」から切り離された「どこか遠くの女性たち」という「他者」をつくりだすことに加担してきたか、を批判的に考察したい。この試みを通じて、フェミニスト民族誌の再編の一可能性を探っていく。
- 2003-12-30
著者
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- Gross,Rita M.著, Feminism and Religion:An Introduction, Beacon Press 1996, 279p.
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