開拓フロンティアの人類学 : 脱国営化をめぐるギクユ人入植社会の再編
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概要
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サハラ以南アフリカ諸国は現在、大きな変動期を迎えている。それは世界を席巻した経済自由化・政治的民主化の動きと連動し、国の基幹産業となる農業を中心に自由化がもたらされたことによる。ケニア共和国においても、農産物の生産・流通部門への規制が大幅に緩和され、地域社会に暮らす人々の生活が大きく揺り動かされた。多くの研究者は、これらの動きを「第二の自由の波」「第三の変容」などと表して注目しているが、その変化の内実はいまだ理解されていない。事実、地域社会の人々は刻々と変化する社会・経済的状況の中で、様々なネットワークを手繰り寄せて対応しようとしているが、そうしたミクロな視点に基づく報告は少ない。本稿の目的は、巨視的に理解される「経済自由化」のローカルな展開を提示し、その社会的な意味を問い直すことにある。具体的には、ケニア山南麓に創出された開拓フロンティア社会を取り上げる。こうした移住者たちの生活空間は、社会(文化)人類学の調査地として敬遠される傾向にあった。しかし、経済変化に直面した人々の主体的な姿を描くには、地域社会を包摂する政治経済的な影響を強く受ける開拓フロンティア社会を積極的に再評価し、切り結ばれる協力関係を検討する事が有効である。その試みは同時に、人類学において重要な課題となりつつある開発計画や経済政策と地域社会の問題を捉える一つの視点を提供する。
- 2003-12-30