比較の不幸(<特集>人類学の方法としての比較の再検討)
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概要
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人類学において「比較」の方法は時代おくれのものとみなされ、また現地調査そのものも批判の対象になっている。そのような批判に過剰反応して、人類学の一部は、調査、民族誌記述比較など、従来の学問の中心的な営みとされてきた部分をそぎおとし、自己・主体に閉塞する私小説的な相貌を帯びてきている。ラドクリフ=ブラウンやマードックらによる科学主義的な比較研究は、みずからか神の視点に立つ普遍主義的前提にもとづいていたが、レヴィ=ストロース、デュモンらによる遠隔の比較には、西欧中心主義を相対化する視点が含まれていた。デュモンのいう宿命としての比較に対して、非西欧世界の人類学者にはさらに、比較の前提となる単一性、普遍性が外から与えられてきたという点で、大きく異なっている。人類の普遍性、人間の単一性とはキリスト教世界が浸透させてきた神話の意味があるが、このような普遍神話、単一神話は、非西欧世界のエリートによって受容され、定着させられてきた歴史もある。このような限界を意識した、いわば物象化された普遍性を前提とした比較の試みは、西欧中心主義を批判するとともに、人類学のあたらしい可能性をも示唆している。
- 2003-09-30
著者
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