精霊の流通 : ガーナ南部における宗教祭祀の刷新と遠隔地交易
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概要
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本論の目的は、西アフリカにおける遠隔地交易と精霊祭祀の流通に焦点を当て、広域にわたる諸民族の移動と交渉と、宗教実践の刷新との歴史的関係を検討することである。アフリカの宗教実践を主題とする近年の人類学的研究の多くは、アフリカ諸社会における新たな宗教実践の発展を植民地化と近代化の影響に対する抵抗であり、独自の歴史意識の再構築として論じている。これらの議論では西欧中心の覇権的な権力システムの存在を前提とし、かつ西欧世界との接触を基点としてアフリカ社会の宗教変容を分析しているために、前植民地期を含むアフリカ社会の重層的な構成や、集団と個々人の越境的な移動と交渉に伴う宗教実践の革新についての検討が捨象されている。本論は、西アフリカの内陸サバンナ地域と南部森林地帯とを結ぶ遠隔地交易に焦点を当て、19世紀以降のガーナ南部における呪術的要素の流通と精霊祭祀の形成過程を検討する。第II章では南部の地域共同体と結びついた神霊祭祀と、内陸部に起源をもち機動力に富む精霊祭祀の対照的特徴を示すとともに、イスラーム的要素をはじめ精霊祭祀の包含する複合性を明らかにする。第III章では、交易・戦闘・開拓等の越境的な諸事業と結びついた宗教実践の刷新と、新たな伝統の創出を含む宗教祭祀間の接合の歴史を考察する。以上の検討から本論は、西アフリカの広域にわたる諸民族間の交渉と移動に伴い、恒常的に混淆と刷新を重ねてきた宗教実践の革新性と越境性を提示する。
- 日本文化人類学会の論文
- 2003-09-30
著者
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